君の瞼にそっと口づけをしたように

夏が終わる。


蜩のなき声をききながら、寝入ろうとする太陽に目を細めた。


そういえば君と出会ったのも、こんな息苦しい夏だったっけ。
初めて君に触れたのも、こんな生き苦しい夏だったっけ。

真っ白な光を浴びて眩しそうに瞼を閉じた君の睫毛の影が、
頬に細い影を落とすのを、
スローモーションで見ているような気分だった。

君に、恋をしていた。
恋をするしかなかったのだ。



もうすぐ、夏が終わる。
いつもこのなき声には慣れない。

(ひんやりとした空気を胸にしまって)
(あたたまった空気を惜しむように吐き出して)

もうすぐ、夏が終わる。

(また僕は瞼を閉じて)


(もう一度息をした)