まだ僕らが瑞々しかった頃の話さ。

しんと静まりかえった空(天気が良かったわけでも悪かったわけでもない。ただそんな印象を受けた)の下で彼は言った


「ねえ、君の耳のピアスをひとつちょうだい」


だけど僕はピアスなんかつけていなかったし、
穴すらあけていなかったんだ

ああ、君は本当に突拍子もないことを言うね。



「ごめん、あげられるものはないよ」

「でもかえす言葉はくれたさ」


そう言って、表情ひとつ変えずに泣きだした彼に、
僕が何も言えずにいたのは、もう随分と昔の話。